ひとつ増えるたびに、少し安心する夜
眠れない夜が続くと、
気づかないうちに、
手元にあるものが増えていきます。
枕を変えてみる。
次は、別のマットレス。
香りや、触感。
光を遮るものや、音を和らげるもの。
ひとつ増えるたびに、
「これで少しは違うかもしれない」
そんな小さな安心が生まれます。
今夜こそは。
今度こそは。
そう思いながら、
眠りに近づこうとする。
その行為自体は、
不自然なことではありません。
眠れない状態が続けば、
何かに頼りたくなるのは、
とても自然な反応です。
ただ、道具が増えていくほど、
夜の感覚が
少しずつ複雑になっていくこともあります。
第1章|それは意志や努力の問題ではない
道具を増やしてしまう自分を、
責めたくなる夜もあるかもしれません。
「また買ってしまった」
「こんなことをしても意味がないのに」
そんなふうに、
自分の行動を
否定したくなる瞬間。
けれど、
眠れない状態にあるとき、
人は自然と
安心材料を探します。
それは弱さではなく、
身体が
落ち着こうとしている証でもあります。
眠りは、
努力で押し切れるものではありません。
だからこそ、
外側にあるものに
手を伸ばしたくなる。
道具を増やす行為は、
眠れなさに対する
ひとつの対処の形です。
良い・悪いで
判断する必要はありません。
第2章|内側に向けすぎた意識の話
道具が増えていく背景には、
「自分の内側をどうにかしなければ」
という意識が
隠れていることがあります。
リラックスできていないのは、
自分の心の問題。
考えすぎているのは、
性格のせい。
そう考えるほど、
内側を変えようとする力が
強くなります。
そして、その力みを
どうにか外そうとして、
また新しい道具に
期待をかけてしまう。
気づけば、
眠る前の時間が、
整えるための作業で
埋まっていく。
けれど、
整えようとする行為そのものが、
眠りに向かう感覚を
遠ざけてしまうこともあります。
第3章|環境・感覚という別の見方
環境という視点で見ると、
道具が増えていくことには、
別の側面が見えてきます。
触れるものが増える。
感じ取る刺激が増える。
選択肢が増える。
一つひとつは小さくても、
それらが重なることで、
身体は
思っている以上に
情報を受け取っています。
安心のために増やしたものが、
知らないうちに、
意識を目覚めさせてしまうこともあります。
環境は、
足し算だけで
整うものではありません。
慣れているつもりでも、
身体は正直に反応しています。
第4章|正解を作らないという選択
道具が増えていくと、
いつの間にか
「これだけ揃えたのだから」
という気持ちが生まれることがあります。
これで眠れなければおかしい。
ここまでやったのに。
そんな思いが、
静かに夜に残ってしまう。
でも、眠りに関しては、
揃えた数や手間が
安心に直結するとは限りません。
たくさん用意したからといって、
正解に近づいているわけでもない。
正解を作らない、という選択は、
道具を減らすことを
意味するわけではありません。
増えたままでもいい。
使わなくなったものがあってもいい。
ただ、
「これでなければならない」
という形を
自分に課さないこと。
その余白があるだけで、
眠りに向かう気持ちは、
少しずつ軽くなっていきます。
終章|今夜、何かを変えなくていい
この記事を読んだからといって、
今夜すぐに
道具を減らす必要はありません。
増えてしまったとしても、
それは間違いではありません。
眠れなかった夜を、
どうにかしようとした結果です。
今夜は、
そのままの環境で
横になっても大丈夫です。
整えきれていなくても、
完成していなくても、
問題はありません。
眠りに必要なものは、
人によって違います。
そして、その形は
日々変わっていきます。
このサイトでは、
「増やしすぎたかもしれない夜」も、
否定せずに扱っていきます。
次の記事では、
また別の角度から、
眠れない夜の感覚を
静かに言葉にしていきます。
今夜はただ、
その余韻の中に
身を置いても大丈夫です。

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